病気やケガで働けなくなり、住宅ローンの返済が困難になるケースは少なくありません。
こうした状況に陥っても、毎月のローンは支払っていかなければなりません。
滞納が続くと、やがて自宅が競売に進むリスクが高まります。
本記事では、こうしたリスクを回避するために取るべき行動や対処法について解説します。
この記事でわかること
- 抱えている病気が高度障害に該当する場合、団体信用生命保険(団信)が適用されるかどうかが分かる
- 公的制度を利用して、住宅ローンの返済に充てる方法について理解できる
- 保険や制度が利用できない場合の対処法がある
- 持ち家を売却せずに、そのまま住み続ける方法がある
病気で住宅ローンが払えないからといって、必ずしも家を失うとは限りません。
この記事を読めば、病気やケガで働けなくなった場合の対処法が分かり、競売を回避し生活再建を目指すことが可能です。
ケガや病気で住宅ローンの返済にお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。
病気で収入が減ったときに最優先で確認すべき5つの保障

病気で働けなくなり、住宅ローンの支払いが難しくなったとしても、すぐに家を手放す必要があるとは限りません。
まずは、加入している保険のなかに適用できるものがないかを確認しましょう。
保険の内容によっては、住宅ローンの返済負担を軽減できる可能性があるためです。
ここでは、病気で働けなくなったときに、最初に確認しておきたい保障について整理して解説します。
病気で収入が減ったときに最優先で確認すべき5つの保障
抱えている病気が高度障害に該当しないか(団体信用生命保険)
まずは、現在抱えている病気が高度障害の基準に該当するかどうかを確認しましょう。
高度障害とは
高度障害とは、病気やケガが原因で身体の機能が著しく損なわれ、日常生活を送るのが極めて困難な状態のことです。
具体的な症状については、次のようなケースが該当します。
- 両目の視力を完全に失った
- 言語機能や咀嚼機能を完全に失った
- 脳や脊髄、心臓などの主要な臓器に重い障害が残り、常に介護が必要な状態
- 両腕または両足を手首・足首より上で失った、あるいはその機能を完全に失った
- 片方の腕または片方の足の手首・足首以上を失った、あるいは両方が全く機能しなくなった
- 片方の腕が全く機能せず、片足の足首より上を失った
現在抱えている病気が上記のいずれかに該当する場合、団体信用生命保険(団信)が適用されます。
団体信用生命保険(団信)が使えないか
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン利用者が死亡や高度障害になった場合、保険会社が残債を全額支払う仕組みのことです。
住宅ローンを契約する際、金融機関は利用者に団信の加入を義務付けます。
住宅ローンは長年にわたって返済していくもので、債務者が途中で病気などで返済ができなくなるのを防ぐためです。
ただし、フラット35のように団信の加入は任意となっている住宅ローンもあるため、加入しているか確認が必要です。
フラット35とは?
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が協力して提供する、固定金利の住宅ローンのことです。
最長35年間、金利が変わらないため、将来の返済計画が立てやすいのが特徴です。
現在契約しているローンに団信が組まれているかは、住宅ローンの契約書や金融機関のネットバンキングで確認できます。
団信の特約について
団信には、死亡や高度障害の基準に該当しなくても、金利は上がりますが補償の対象となる病気が増えるオプションがあります。
特約に該当する病気であれば、保険会社が残りのローンを肩代わりしてくれるので安心です。
特約には、次のようなオプションがあります。
- 3大疾病保障:がん・急性心筋梗塞・脳卒中
- 8大疾病保障:がん・急性心筋梗塞・脳卒中、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎
がんの場合は診断された時点で、また急性心筋梗塞や脳卒中では、一定の状態が60日以上続いたときに補償が適用されます。
その他の病気についても、一定期間(例:12か月)以上、働けない状態が続いた場合には保障を受けることが可能です。
ただし、金融機関によって特約の保障内容が異なるため、その点には注意が必要です。
住宅ローンの契約書や金融機関から届いている保険証券に補償内容が記載されているため、一度確認することをおすすめします。
団信を利用する際の注意点
団信は生命保険の一種であるため、保険金が支払われる条件が設定されています。
次の項目に該当する場合は、原則として補償を受け取れないため注意が必要です。
- 保険会社が定めた高度障害や疾病状態に当てはまらない場合
- 加入時に病歴や通院歴を正しく告知していなかった場合
- 住宅ローンを滞納し、代位弁済(保証会社が借金を立て替えて返済すること)が行われた場合
- 金融機関に対して保険金の手続きをしていない場合
このようなケースでは、保険金が受け取れないため、事前に補償内容や適用条件を確認しておきましょう。
債務返済支援保険に入っていないか
債務返済支援保険とは、病気やケガによって働けなくなった場合の収入減に備える保険です。
入院だけでなく働けなくなった場合にも保険が適用され、住宅ローンをサポートしてもらえます。
また団信のように加入の義務がなく、対象の病気が多いことが特徴です。
債務返済支援保険では、次のような場合に保険金が支払われる仕組みになっています。
- 病気やケガで、30日を超えて入院した
- 医師の指示を受けて、自宅で療養している
上記のいずれかに該当する場合は、毎月一定額の保険金が受け取れます。
1回の入院で最大25か月、返済金相当額を補償してもらえるため経済的にも安心です。
なお、補償内容は保険会社によって異なるほか、保険金の支給は入院や療養開始から31日目以降となる点に注意が必要です。
保険金は、毎月支払っている金額をもとに、次のような方法で計算されます。
保険金の計算方法
ボーナスを含んだ年間返済予定合計額の1/12が、毎月支払われる
例:毎月の返済額が8万円、ボーナスの返済額が12万円(年2回)
(80,000円×12か月+120,000円×2回)÷12=10万円
この場合、債務返済支援保険をかけていれば毎月10万円の保険金が支払われます。
また、保険金は身体のケガが原因で支払われる保険金であるため、税金はかかりません。
ただし、健康状態を偽って報告するとルール違反となり、たとえ働けなくなった場合でも保険金は支払われないので注意が必要です。
こうした告知義務違反は後から判明するケースが多いため、健康状態については正確に申告することが重要です。
保険料について
債務返済支援保険の保険料は、年間の返済予定額を12で割った月々の返済額を基に算出されます。
月額1万円あたりの保険料が設定されており、団体信用生命保険のように金利に上乗せされる仕組みではありません。
例えば、月々のローンの返済額が12万円の場合を考えてみましょう。
保険料の計算方法
仮に、返済額1万円あたり60円に設定されているとすると、保険料は次のように計算されます。
60円×(12万円÷1万円)=720円
この場合、毎月の債務返済支援保険の保険料は720円となります。
なお、債務返済支援保険は金融機関が保険料を負担することで、契約者の自己負担がないケースもあります。
そのため、加入を検討する際は保険内容をよく確認することが大切です。
参照:病気や怪我で住宅ローンが支払えなくなった場合にとるべき手段・解決方法
就業不能保険で補償を受けられないか
就業不能保険とは、病気やケガで働けない状態が続いたときに、一定の保険金が支給される保険です。
医療保険に加入していれば、この就業不能保険が付帯しているケースがあります。
給付金は商品によって支払い形式が異なり、一時金や年金、月払のいずれかで支給されるのが一般的です。
具体的には、次のような支払い形式もあります。
就業不能状態が60日以上継続した場合
- 1年5か月まで:短期就業不能給付金として毎月一定額が支給される
- 1年6か月以降:長期就業不能給付金として異なる金額が毎月支給される
こうした支払い形式はほんの一例ですが、ほかには一括で支払う商品もあります。
ただし就業不能になってから60日間は免責期間となるため、保険金は受け取れないので注意してください。
住宅ローン返済に特化した保険ではありませんが、支給される給付金を生活費やローンの支払いに充てることが可能です。
また補償内容は契約によって異なるため、加入の有無を確認後、その内容を把握しておきましょう。
参照:就業不能保障保険
傷病手当金を受給できないか
傷病手当金とは、健康保険に加入している公務員や会社員が業務外の病気やケガで働けず、給料が支払われない場合に受け取れる給付金です。
この制度は健康保険に加入している公務員や会社員が対象となり、支給額は給与の2/3程度で、最長1年6か月間支給されます。
一方で、自営業やフリーランスなどの国民健康保険者の方は、この制度の対象外となります。
では、実際にどのくらいの金額が受け取れるのか、月給25万円の場合を例に見てみましょう。
月給25万円の場合の給付金
1日あたりの給与:25万円 ÷ 30日 = 約8,333円
1日あたりの傷病手当金:約8,333円 × 2/3 = 約5,555円
1か月あたりの傷病手当金:約5,555円×30日=約16万6,000円
このように、月給が25万円の場合、1か月で受け取れる傷病手当金は約16万6,000円です。
ただし、休業中に会社から給与が一部支払われている場合は、傷病手当金は全額ではなく差額分のみが支給されます。
傷病手当金は給与の全額ではありませんが、支出を見直すことで住宅ローンの返済を続けられるケースもあります。
なお、通勤・退勤中でのケガや病気の場合は、労災保険の対象となり傷病手当金と同時に受給できないため注意が必要です。
参照:全国健康保険協会
傷病手当金の申請先
傷病手当金の申請先は、以下の2つの機関です。
- 健康保険組合
- 協会けんぽ(全国健康保険協会)
申請の際は、傷病手当金支給申請書や医師の診断書、本人確認書類(運転免許書、マイナンバーカードのコピー)が必要です。
傷病手当支給申請書の記入法や必要書類については、下記のサイトで確認してください。
労災保険が適用されないか
労災保険とは、業務中や通勤中が原因でケガや病気を負い、働けなくなった場合に補償を受けられる公的保険制度です。
世間では労災と呼ばれるのが一般的ですが、正式には「労働者災害補償保険」と言います。
業務中や通勤中にケガや病気を負った場合、労災保険が適用されます。
労災保険で受けられる補償は、次の通りです。
- 治療費が全額補償される
- 働けない期間中は給付金がもらえる
このように、働けない期間中は給付金が支給されるため、そのお金を住宅ローンの返済に充てられます。
なお、保険金は企業が全額負担するため、労働者は保険料を支払う必要はありません。
労災保険の対象となるのは、事業主に雇用されているすべての労働者にあたります。
以下に、主な労働者の雇用形態についてまとめました。
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員(派遣会社が労災保険の申請を行う)
- パート
- アルバイト
- 日雇い労働者
労災保険は、雇用形態や職種、または会社の規模に関係なく、1人でも雇用している事業所であれば受けられる制度です。
なお、派遣社員の場合は雇用主である派遣会社(派遣元)が労災保険の申請を担当します。
これに対して、フリーランスなどの個人事業主は労災保険の対象外となります。
ただし、2024年11月1日から特定フリーランス事業の方は、業種・職種に関係なく労災保険に特別加入できるようになりました。
特定フリーランス事業とは?
「特定フリーランス事業」とは、企業などから業務委託を受けて働くフリーランスや個人事業主を対象に、労災保険の加入を認めた制度です。
通勤中や仕事中のケガや病気、または死亡に対して、労災保険が適用されます。
業務委託とは、自社の特定の業務を他の事業者(企業やフリーランスなど)に依頼することです。
業務委託の具体例
- システム開発
- ライティング
- 通訳
補償の対象となるのは、フリーランスが企業などから業務委託を受けて行う仕事です。
また、一般の消費者からの依頼でも、企業から業務委託を受けて行っている仕事と同種の業務については、労災保険の補償対象となります。
ただし、企業との業務委託が一切ない場合や、委託に該当しない自主的な活動(自作したものをネットで販売など)は対象外です。
この制度を活用することで、雇用契約がなくても労災保険の保障を受けられる点は、大きなメリットです。
なお、特定フリーランス事業の制度の詳細などについては、下記のサイトを参照してください。
参照:厚生労働省「特定フリーランス事業の労災保険の特別加入について」
保険金について
病気やケガで働けなくなり賃金が支払われない場合、労災保険では休業4日目から給付基礎日額の80%が支給されます。
「給付基礎日額」とは、災害発生前の3か月間の給与をもとに計算された、1日あたりの平均的な収入額のことを指します。
また、この80%という数字は2種類の給付を合わせた金額です。
支給額の内訳は、次の通りです。
- 休業補償給付:給付基礎日額の60%
- 休業特別支給金:給付基礎日額の20%
労災保険では、病気やケガの治療費が全額負担されるため、労働者はお金の心配が要りません。
ただし、労災指定病院以外の医療機関で受診した場合は、一度治療費を建て替える必要があるので注意してください。
保険が使えない場合に検討すべき3つの返済軽減策

民間・医療保険や公的制度の補償が適用されなくても、住宅ローンの滞納を防ぐ方法はいくつかあります。
ここでは、保険や制度が利用できない場合の住宅ローン滞納の対処法を3つ紹介します。
保険が使えない場合に検討すべき3つの返済軽減策
返済条件の見直しを金融機関に相談する(リスケジュール)
病気やケガで住宅ローンの返済が難しい場合、金融機関へ相談しリスケジュールを検討しましょう。
リスケジュール(リスケ)とは、住宅ローンの返済計画を見直し、月々の負担を軽減する方法です。
具体的には、次のような対応が考えられます。
- 元金据え置き
- 毎月の返済額を一時的に減額
- ボーナス払いの見直し・停止
- 返済計画全体を組み直す
1.元金据え置き
元金据え置きとは、一定期間、借入した金額(元本)の返済を止め利息のみを支払っていく方法です。
元本の支払いが一時的に猶予されるため、毎月の負担が軽減されます。
ただし、一時的に返済負担は軽くなりますが、元金が減らない点には注意が必要です。
据え置き期間終了後、元本とまとめて返済するため、将来的な返済負担が増える可能性があります。
2.毎月の返済額を一時的に減額
毎月の返済額を調整し、一時的にローンの支払いを減額する方法があります。
具体的には、毎月8万円の返済スケジュールを月々4万円に抑えるといったケースです。
ただし、毎月の支払額を減らしているため、調整した分は将来返済していく必要があります。
3.ボーナス払いの見直し・停止
ボーナス返済を設定している場合、一時的にボーナス払いを停止したり、返済額を見直したりする方法があります。
ただし、調整した金額はいずれ支払わないといけないため、注意が必要です。
4.返済計画全体を組み直す
返済計画を見直して、借入期間を延長する方法があります。
例えば、契約時30年で完済予定だった住宅ローンを35年や40年で返済できるようにプランを組み直します。
ただし、返済期間を延長すればその分の利息が発生し、返済総額は高くなるため注意が必要です。
リスケを行う際の注意点について
リスケを行うことで、毎月のローンを減額できるため経済的な負担を減らせます。
ただし、返済期間を延長しているため、その分の利息が発生し最終的なローンの支払い総額は高くなる点には注意が必要です。
そのためリスケを行う際は、今後の収入回復を考慮して慎重に検討することをおすすめします。
また、リスケには審査があるため、申請すれば必ず認められるわけではないので、その点には注意してください。
家族や親族から支援してもらう
住宅ローンの返済が困難な場合、家族や親族から資金面で援助してもらう方法があります。
金融機関の審査が不要で、無利息または低利で借りられるため、返済負担を軽減できるのがメリットです。
ただし、次のような点には注意が必要です。
- 金利や返済計画を明確にしないと、贈与とみなされ課税されるリスクがある
- 年間110万円以上受け取った場合は贈与税の対象となる
このように、親族からの借入であっても、金利や返済計画を明示していない場合は贈与と見なされる恐れがあります。
こうしたリスクを回避するには、借用書を作成し返済計画を明確に分かるようにする必要があります。
あわせて、金利は最低でも0.1%程度に設定し、銀行振り込みなど取引が可視化できる方法で返済していくことが重要です。
参照:病気で住宅ローンが払えないときの対処法|保険が使えない場合はどうする?
家の売却を検討(アンダーローン)
返済の目処が立たない場合、家の売却によってローンの負担を軽減する選択肢もあります。
アンダーローンとは、住宅ローンの残債が家の売却価格を下回っている状態のことです。
つまり、残りのローンよりも売却価格の方が高いため、自宅が売却できれば完済できます。
また売却益が出た場合は、次のような費用に充てることも可能です。
- 新居購入
- 引越し費用
- 売却後の生活費
ただし、家を売却するには買主を見つけなければならないため、現金化するまでは時間がかかる点には注意が必要です。
また、売却には仲介手数料やその他の諸費用が発生するため、手元に残る金額が想定よりも少なくなる可能性があります。
売却が成功すればローンの返済から解放され、病気やケガの治療に専念できます。
その結果、経済的・心理的な負担が大幅に軽減されるでしょう。
任意売却を検討する(オーバーローンの場合)

住宅ローンの残債が売却価格を上回っている場合でも、金融機関と相談することで家を売却できる可能性があります。
この方法は任意売却と呼ばれるもので、市場価格に近い金額で売却できるのがメリットです。
ここでは、オーバーローン時の売却方法をはじめ、任意売却の注意点や競売との違いについて解説します。
任意売却を検討する(オーバーローンの場合)
任意売却ならオーバーローン状態でも売却できる
オーバーローンとは、住宅ローンの残債が売却価格を上回っている状態のことです。
住宅ローンを契約すると、債権者は返済が滞った場合に備えて、家に抵当権を設定します。
- 抵当権:住宅ローンが返済できなくなったときに、金融機関が家を売却して回収する権利
- 債権者:お金を貸す側(この場合、金融機関)
※なお、お金を借りる側は債務者と言います。
そのため、ローンが完済されていないオーバーローン状態の物件は、原則として債権者の許可なしに売却できません。
しかし、任意売却であれば、金融機関の同意を得ることで、オーバーローン状態でも家を売却できます。
任意売却とは、金融機関の同意を得て、市場価格に近い金額で家を売却する手続きです。
ただし、任意売却にはメリットばかりではなく、いくつかの注意点もあるため事前に確認しておくことが重要です。
任意売却の注意点
任意売却は通常売却とは異なり、いくつかの注意点があります。
次の点には、特に注意が必要です。
- 金融機関との交渉が不可欠である
- 売却までの期限が限られている
- 連帯保証人や共有名義人の承諾が必要になる
- 信用情報機関に登録される可能性がある
このように、任意売却は時間制約などのデメリットがあり、通常売却に比べて自由度が低いと言えるでしょう。
また売却後も住宅ローンが残っているため、返済していく必要があります。
返済負担を少しでも軽減させるためには、より良い条件で売却することが大切です。
相談先としては、任意売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶと良いでしょう。
任意売却と競売との違い
任意売却と競売は、どちらも不動産を売却する手続きですが、両者にはそれぞれ特徴があります。
競売とは、住宅ローンが返済できなくなったときに、債権者が強制的に不動産を売却し、その代金から借金を回収する手続きです。
競売は、裁判所を通じて行われるため、債務者の意思とは関係なく進められるのが特徴です。
以下に、任意売却と競売との違いを表にまとめました。
| 任意売却 | 競売 | |
|---|---|---|
| 売却の進め方 | 金融機関の同意を得て進める | 裁判所の手続きで強制的に進められる |
| 売却価格 | 市場価格に近い | 市場価格の5~7割程度 |
| 売却までの流れ | 不動産会社と相談しながら進められる | 裁判所主導で進む |
| 周囲に知られる可能性 | 低い(通常の不動産売却と同様に売却活動が行われるため) | 高い(物件情報が公示されるため) |
| 引越し時期 | 相談・調整できる余地がある | 強制退去 |
| 精神的負担 | 比較的少ない | 大きくなりやすい |
上記のように、任意売却と競売では、売却条件や本人の負担に大きな違いがあります。
そのため、競売に進む前に任意売却を検討することが重要です。
家を手放さずに住み続けるための3つの方法

住宅ローンが払えなくなっても、自宅を手放したくないと考える人は少なくないでしょう。
子どもの学校や通勤の事情があるなど、簡単に引っ越しを決断できない理由は人それぞれです。
実は、住宅ローンが払えなくても、そのまま自宅に住み続けられる方法があります。
ここでは、住宅ローンの返済が厳しい場合でも自宅を手放さずに住み続ける代表的な方法を3つ紹介します。
個人再生
個人再生とは、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、3〜5年かけて返済していく債務整理手続きです。
減額される金額は場合によって異なりますが、最大で8割程度カットされることもあります。
個人再生の大きな特徴は、「住宅ローン特則」を利用することで、持ち家を残したまま住宅ローン以外の借金を減額できる点です。
「住宅ローン特則」とは?
「住宅ローン特則」とは、住宅ローンを減額せずに支払い続ける代わりに、自宅を競売から守るための特別なルールのことです。
正式には、「住宅資金特別条項」と言います。
特則を利用するには、次の手続きが必要です。
- 返済計画をまとめた「再生計画」を裁判所に提出
- 債権者の決議のうえ、裁判所の認可を受ける
通常、債務整理を行うと自宅を処分される可能性がありますが、住宅ローン特則を使えば持ち家を失うリスクを回避できます。
住宅ローン以外の借金が大幅に減額できれば、住宅ローンの返済がスムーズになり、生活再建を目指せます。
ただし、住宅ローンの借入のみではこの手続きは利用できないので注意が必要です。
あくまでも、多重債務を負った方が対象です。
リースバック
リースバックとは、自宅を不動産会社や投資家に売却し、その買主と賃貸契約を結ぶことで売却後も同じ家に住み続ける方法です。
住宅ローンの返済が難しくなった場合でも、住み慣れた自宅を離れずに競売を回避できる有効な手段の一つです。
リースバックでの売却価格は、市場価格の7〜9割程度になることが一般的です。
以下に、リースバックのメリット、デメリットまたは注意点についてまとめました。
| メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|
| 引っ越しをせず、そのまま自宅に住み続けられる | 所有権は買主に移るため、家は自分の資産ではなくなる |
| まとまった売却資金を確保できる | 売却価格に応じて家賃が決まるため、高値で売るほど家賃も高くなりやすい |
| 固定資産税や修繕費などの所有コストが不要になる | 賃貸借契約の種類によっては、長く住めない場合がある |
| 近隣に事情を知られにくい | オーバーローンの場合、債権者の承諾が得られないと利用できない |
| 買戻しが可能な場合がある(※買戻し特約を付けた場合) | 買主が第三者へ転売した場合、その所有者から退去を求められる可能性がある |
このように、所有権は買主に移ってしまいますが、まとまった資金を確保しつつ持ち家に住み続けられるため、生活再建を目指せます。
また買い戻し特約を付けている場合、将来、経済状況が好転すれば自宅を買い戻せる可能性があります。
リースバックは、一般的な不動産会社では扱っていないことが多く、専門知識と実績が不可欠です。
そのため、リースバックを成功させるには、実績の豊富な専門の不動産会社に相談することが重要です。
親族間売買
親族間売買とは、親族(親子や夫婦、兄弟姉妹、子どもなど)に自宅を売却し、そのまま住み続ける手続きです。
親族間での取引であるため、第三者に家を売却せずに済みます。
親族の範囲とは?
通常、親族の範囲は親子や夫婦、兄弟姉妹、子供などを指します。
ただし、親族間売買における「親族の範囲」については、税務署では明確に定義されていません。
そのため、一般的には次のような民法上の「親族」が目安とされています。
民法上の親族の範囲(民法第725条)
- 6親等以内の血族(自分の両親、子ども、孫、ひ孫、祖父母、いとこなど)
- 配偶者(妻・夫)
- 3親等以内の姻族(配偶者の両親、兄弟姉妹など)
親族間売買の流れは、次の通りです。
- 親族に住宅ローンが残っている自宅を適正価格で売却する(適正価格:市場価格に近い金額)
- 買主と賃貸契約を結ぶ
- 家賃を支払いながら住み続ける
家の所有権は買主に移りますが、売却後もそのまま自宅に住み続けられます。
また親族との取引のため、第三者に売却するよりも安心でき、家賃の金額や支払い時期などを交渉しやすいメリットもあります。
さらに、一時的に所有権を親族に移し、将来的に買戻しをするといった形を取ることも可能です。
ただし、一般的な不動産取引とは異なり、以下の点に注意が必要です。
- 住宅ローンの審査が厳しくなる傾向がある(融資が住宅購入以外の目的で使用される可能性があるため)
- 市場価格よりも極めて低い金額で売却すると、贈与とみなされ課税される可能性がある
- 金銭が絡んでいるため、親族関係が悪化するリスクがある
このようなリスクを避けるには、不動産会社に査定を依頼し、売買契約書や賃貸借契約書を専門家に作成してもらうことが重要です。
親族間売買は通常売却とは異なる判断が必要なため、実績のある不動産会社や司法書士・弁護士など専門家のサポートが欠かせません。
こうした専門家と連携しながら手続きを進めて行くことが、成功への鍵となります。
まとめ:競売に進む前に、早めに専門家へ相談しましょう
病気で働けなくなっても、住宅ローンを支払っていかなければなりません。
ローンを滞納し放置すると、いずれは競売にかけられ自宅を失ってしまう可能性があります。
こうした最悪の事態を防ぐためにも、早めに行動することが大切です。
競売を回避するには、住宅ローン滞納問題に精通した不動産会社に相談しましょう。