会社の業績悪化やリストラなどで収入が減少し、住宅ローンの返済が困難になるケースは少なくありません。
住宅ローンを滞納すると、「すぐに持ち家を手放さなければならない」と考える方も多いでしょう。
しかし、1度の滞納ですぐに家を失うことはありません。
この記事でわかること
- 住宅ローンの滞納から競売までの流れを把握できる
- 競売を回避するために今すぐ取るべき行動がわかる
- 持ち家を手放さずに済む方法についてわかる
この記事では住宅ローンの返済が困難になった人を対象に、滞納後に発生することや競売までの流れ、自宅を守る対処法について解説します。
最後まで読むことで、今取るべき行動が具体的にわかり、焦らず冷静に対処できるようになるでしょう。
住宅ローンが払えないとどうなる?滞納から競売までの流れ

住宅ローンの返済が遅れると、段階的にさまざまな出来事が起こります。
競売は複数の手続きを踏んで進められるため、滞納から売却までには一般的に1年以上かかることもあります。
そのため、1回の滞納で持ち家を失うわけではありません。
ここでは、住宅ローンを滞納した場合にどのようなことが起こるのか、時系列に沿って確認していきましょう。
金融機関から督促の連絡が来る
住宅ローンの支払いが遅れると、数日後に金融機関から電話や書面による督促の連絡が届きます。
連絡の内容は、支払い忘れの確認や不足金額の振込期限についてです。
この時点で指定日までに遅延損害金を含む滞納分を支払えば、引き続き自宅に住み続けられます。
期日までの返済が困難な場合でも、連絡に誠実に対応し返済の目処を具体的に伝えれば大きな問題に至りません。
絶対にやってはいけない注意点
- 連絡を無視する
- 約束の期日までに入金しない
督促や連絡を無視し続けると、次の段階として「催告書」という書類が送られてきます。
督促状と催告書の違い
- 督促状:支払いの確認や催促(初期段階)
- 催告書:法的措置を前提とした最終通告
催告書とは、遅延損害金を含めた滞納分を指定の期日までに支払うよう求める、最終警告の書類です。
この書類は通常、金融機関が債務者に届けたという証拠を徹底的に残すために内容証明郵便で送られています。
指定の期日までに支払いができなければ、競売などの法的措置をとる旨が記載されています。
ただしこの段階で遅延損害金を含めた滞納分を全額支払えば、競売に至ることはありません。
ブラックリストに登録され、住宅ローンの分割払いができなくなる
金融機関からの督促状や催告書を無視し続けると、事態は一気に深刻化します。
住宅ローンの支払いが3か月以上滞ると、滞納履歴が信用情報に登録されます。
これはいわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものです。
登録されると、次のような影響があります。
信用情報に登録されるとできなくなること
- 新規クレジットカード作成
- スマホの分割払い
- 各種ローンの利用(自動車ローンなど)
上記のような支払い方法ができなくなり、日常生活のさまざまな場面で支障をきたします。
また滞納を解消した場合でも信用情報はすぐに回復せず、5~10年程度は新たな借り入れができなくなるのが一般的です。
一括返済を求められる
金融機関からの督促状や催告書を無視し滞納が4か月以上続くと、期限の利益が喪失します。
期限の利益喪失とは、住宅ローンを分割払いで返済できる権利を失うことです。
つまり、残りの住宅ローンに遅延損害金を含んだ額の一括返済を求められるわけです。
しかし月々の支払いでさえ困難な債務者にとって、一括返済は現実的に厳しいでしょう。
保証会社による代位弁済が行われる
住宅ローンの返済が不能になると、保証会社が債務者に代わって残りの住宅ローンを全額肩代わりします。
これを「代位弁済」といい、金融機関が債務者から住宅ローンを回収できない場合に備えて返済する仕組みです。
ただし代位弁済が行われても、返済義務がなくなるわけではありません。
返済先が金融機関から保証会社に変わるだけで、引き続き返済を続けなければなりません。
自宅が差し押さえられる
滞納が6〜9か月続くと、裁判所から競売開始決定通知という書類が届きます。
競売開始決定通知とは、競売手続きが本格的に開始したことを知らせる重要な書類です。
この書類が届いた時点で自宅が法的に差し押さえられ、主に次のようなことができなくなります。
差し押さえ後にできなくなること
- 自宅を自由に売却すること
- 自宅を第三者に貸すこと
上記のように所有権が制限されるため、自宅を自分の意思で自由に扱えなくなります。
ただし、競売開始決定通知が届いたからといってすぐに自宅を追い出されるわけではありません。
強制的に立ち退きを命じられるまでは、さらに13~16か月の時間的猶予があります。
最終的には競売になる可能性がある
競売開始決定通知が届いたあと、裁判所は次のような競売手続きを進めていきます。
現況調査から競売までの流れ
| 段階 | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 現況調査(不動産価格の鑑定) | 裁判所の執行官・不動産鑑定士による売却価格を決めるため自宅を訪問 | 競売開始決定通知から1~2か月後 |
| 期間入札の通知書が届く | 通知書には、入札期間や開札日、売却基準価額について記載されている | 現況調査から1~2か月後 |
| 入札・開札 | 落札者が決定 | 期間入札の通知書が届いてから2~3か月後 |
| 所有権移転 | 売却代金を入金後、所有権が落札者に移転する | 開札後約1か月以内 |
| 立ち退き | 新所有者から明け渡しを求められる | 所有権移転から1~2か月以内 |
現況調査は裁判所が法的に行う手続きなため、原則として債務者は拒否できません。
また、物件の情報はインターネットで公開されるため、周囲の人に事情が知られてしまう可能性が高まります。
こうした状況に進んでしまう前に、競売を回避する対策をできるだけ早い段階で検討することが重要です。
滞納から競売に至るまでには1年以上の猶予があるため、この期間を無駄にせず早めの行動が欠かせません。
住宅ローンが払えなくなる前に今すぐできること

住宅ローンが払えなくなり滞納が長期化すると、信用情報に登録されるなどのリスクが高まります。
そのため、問題が深刻化する前に早めの対応が重要です。
まだこの段階であれば、状況を立て直せる可能性は十分にあります。
ここでは、住宅ローンが払えなくなる前にやっておくべき対策について見ていきましょう。
税金や保険料・公共料金の猶予を相談する
失業などで収入が減少している場合、税金や保険料の支払い猶予が受けられる可能性があります。
電気やガスなどの公共料金についても、支払期限の延長や分割払いに応じてもらえることがあります。
こうした猶予を申請する際、現状やいつ支払えるかの目処などを明確に伝えることが必要です。
自治体や各事業者によって対応は異なりますが、一度相談してみることをおすすめします。
家計を見直して固定費を削減する
家計の支出を見直すことで固定費を抑え、住宅ローン返済の資金を確保できます。
例えば、現在契約しているインターネット回線やスマホを格安プランに見直すことで、支出を減らすことが可能です。
ほかにも、次のような方法で出費を削減できます。
- 医療保険・生命保険の契約内容を確認し、不要な特約を外す
- 車の使用頻度が低い場合は売却し、カーシェアリングに切り替える
- 使っていないサブスクリプションサービスを解約する
- 電気・ガス会社をより安いプランに変更する
こうした固定費の削減を組み合わせることで、毎月の負担を大きく抑えられます。
住宅ローンの返済が苦しいと感じたら、まずは家計全体の支出を見直すことから始めてみましょう。
副業や共働きを検討する
住宅ローンの返済が苦しいときは、収入を増やすために副業を検討してみましょう。
ご家族がいる方には、共働きで世帯収入を増やすのも有効な手段の一つです。
近年はデリバリー配達員やスキマバイトアプリが普及しており、空き時間を活用して収入を得られる環境が整っています。
ただし健康に害が生じるほど頑張ってしまうと本業にも支障をきたすため、無理のない範囲で取り組むことが重要です。
金融機関へ相談する(リスケジュール)
住宅ローンが払えなくなる前に、まずは借入先の金融機関へ相談することが重要です。
金融機関はローンの回収不良を避けたいため、早い段階であれば柔軟に返済計画の相談(リスケジュール)に応じてくれます。
リスケジュール(リスケ)とは、返済が困難になったとき、金融機関と相談して返済計画を見直すことです。
具体的には、毎月の返済額を調整して生活への負担を軽くする方法です。
リスケの種類
- 返済期間の延長:ローンの期間を延長して毎月の支払いを減額する
- 元金返済の据え置き:一定期間、利息のみを支払うこと
- ボーナス払いの停止:ボーナス返済を中止し、毎月の返済額へ均等に振り分ける
リスケは上記のように毎月の返済負担を抑えられますが、注意すべき点もあります。
それは毎月の負担が一時的に減りますが、住宅ローン契約時に比べて返済総額が増えることです。
リスケはあくまでも返済を前提とした猶予であり、給付ではありません。
将来的に完済できるかどうかをじっくりと考えたうえで、検討することが重要です。
住宅ローンが払えない場合の家を守る方法

住宅ローンが払えなくなっても、自宅を守る方法はいくつかあります。
借金を圧縮して返済を続ける方法や、所有権は移転しますがそのまま住み続けられる制度など、状況に応じた選択肢があります。
いずれの方法も条件はありますが、自宅を維持できる点は大きなメリットです。
ここでは、住宅ローンが払えない場合でも自宅を守る方法について確認していきましょう。
個人再生の住宅ローン特則を利用する
個人再生とは、裁判所を通じて住宅ローン以外の借金を大幅に圧縮し、3〜5年かけて返済していく制度です。
「住宅ローン特則」という規約を利用することで、住宅ローンを支払い続ければ持ち家を残せます。
ただし、個人再生の住宅ローンを検討する際は次の点に注意してください。
- 住宅ローンはこれまで通り支払い続けなければならない
- その他の借金は減額されるが、原則3~5年かけて返済する必要がある
- 安定した収入があることが条件
住宅ローンと併せて他の借金も返済していく必要があるため、家計への負担は残ります。
そのため、個人再生を検討する際は弁護士や司法書士などの専門家に相談し、慎重に判断することが重要です。
リースバックを活用する
リースバックとは、自宅を不動産会社や投資家に売却し、買主に家賃を支払いそのまま自宅に住み続ける方法です。
所有権は買主に移行しますが、引き続き自宅に住み続けられます。
リースバックは単体で行うこともできますが、住宅ローンの返済が困難なときは任意売却と合わせて利用することが一般的です。
任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンの支払いが困難になったときに金融機関との交渉を経て、一般の不動産と同じ手法で売却する手続きです。
任意売却は競売とは異なり、家を市場価格に近い金額で売却でき、周囲に事情を知られることなく売却できるのがメリットです。
任意売却とリースバックを組み合わせることで、売却後も生活基盤を維持しながら生活再建を目指せます。
ただし、リースバックは毎月の家賃が相場より高くなる傾向がある点には注意が必要です。
リースバックを検討する際は、将来的な支払い能力を考慮したうえで、専門家に相談しながら慎重に判断することが重要です。
親族間売買を活用する
親族間売買とは、親族に自宅を売却し買主に家賃を支払いながら住み続ける方法です。
リースバックと同様に所有権は買主に移行しますが、身内への売却であるため安心感があります。
任意売却と合わせて手続きを進められる点も、リースバックと共通しています。
身内同士の取引であるためメリットがありますが、次の点には注意が必要です。
- 適正価格での売却が必要(贈与と疑われるため)
- 住宅ローンの審査が通りにくい
- 身内同士のトラブルが発生する可能性がある
贈与の意図がなくても相場よりも著しく低い金額で売却した場合、税務上の問題につながります。
そのため、適正価格での取引が欠かせません。
また、契約書は不動産会社ではなく自分たちで作成するため、内容があいまいだと後にトラブルが発生する恐れがあります。
こうしたリスクを避けるためにも、親族間売買の実績が豊富な不動産会社や税理士に相談しながら検討することをおすすめします。
それでも返済が難しい場合は売却を検討する
リースバックや親族間売買、個人再生の住宅ローン特則のいずれも難しい場合、自宅の売却が現実的な選択肢となります。
競売に発展してしまうと市場価格より安く売却されたり、周囲に事情が知られたりするリスクが高まります。
こうした事態を避けるためにも、早めに適切な手段を取ることが重要です。
ここでは、住宅ローン返済が難しい場合の自宅を売却する方法について解説します。
アンダーローンの場合は通常売却
アンダーローンとは、残債が売却価格を下回る状態のことです。
アンダーローン状態であれば、売却後に住宅ローンを完済でき、手元にお金が残る可能性があります。
残った資金は引越し費用や新居の初期費用、当面の生活費に充てられるため、生活再建が比較的しやすいでしょう。
まずは不動産会社に査定を依頼し、自宅がアンダーローン状態であるかを確認しましょう。
オーバーローンの場合は任意売却を検討する
住宅ローンの支払いが困難で残債が売却価格を上回る場合、任意売却を検討するのが一般的です。
任意売却は市場価格に近い金額で売却できるため、競売よりも高値で売れるのがメリットです。
一方、競売は売却価格が市場の5~7割程度に留まり、法的手続きによって進められるため主導権を握ることはできません。
両者の違いを、以下の表で詳しく確認していきましょう。
| 任意売却 | 競売 | |
| 売却価格 | 市場価格に近い水準 | 市場価格の5~7割程度 |
| 主導権 | 自分と金融機関で交渉 | 裁判所・債権者が主導 |
| 周囲への影響 | 通常の売却と同じ手続きで進められるため、滞納状況が漏れる可能性が低い | インターネットで自宅の情報を掲載されるため、周囲に事情を知られるリスクが高い |
| 引越し費用 | 交渉次第で捻出できる場合がある | 基本的に出ない |
| 残債の支払い | 分割返済の交渉が可能 | 一括返済が原則 |
| 売却期限 | 競売の開札日前日まで | 裁判所の指定日まで |
両者を比較しても、任意売却で自宅を売る方が債務者にとって有利な条件が揃っています。
ただし、任意売却は競売の開札日前日までに売却することが前提であるため、時間制限があります。
売却を成功させるためにも、実績のある不動産会社に早めに相談することが不可欠です。
自己破産する
住宅ローンがどうしても支払えないとき、最終手段として自己破産の検討が必要です。
自己破産とは裁判所を通じて行う債務整理の一つで、借金の返済を全額免除してもらえる手続きです。
借金の返済義務がなくなる代わりに、自宅を含めた多くの財産が処分されてしまいます。
加えて、自己破産をすると次のようなことができなくなります。
- ローンの借入(5~10年)
- クレジットカードの作成(5~7年)
- 一部の職業につくこと(例:弁護士、公認会計士、税理士など)
自己破産に対して恥ずかしいイメージを持つ方も多いですが、生活再建を目的とした正当な法的手続きです。
免責が認められれば借金の返済義務がなくなり、取り立てや督促もなくなるため心理的負担は大きく減るでしょう。
ただし自己破産が最善かどうかは本人の状況によって異なるため、まずは弁護士や司法書士に相談してみましょう。
住宅ローンが払えないときのNG行動

住宅ローンの返済が苦しいとき、気持ちの焦りから誤った行動をしてしまいがちです。
こうした行為は根本的な解決にならず、かえって状況を悪化させるだけです。
リスクを回避するためにも、間違った行動は避けましょう。
ここでは、住宅ローンが払えないときにさけるべき行動について解説します。
カードローンで返済を続ける
住宅ローンの返済が難しくても、カードローンの利用はおすすめできません。
カードローンは住宅ローンよりも金利が高く、利用するほど負債が大きくなるだけだからです。
一見その場しのぎで返済できても、やがて借金が家計を圧迫し状況はさらに悪化します。
これ以上負債を増やさないためにも、カードローンでの借入は控えましょう。
何もせず放置する
住宅ローンが払えないときの避けるべき行動の一つは、金融機関からの連絡を放置することです。
連絡を無視し続けることで、次のようなリスクが生じるからです。
- 一括返済を求められる
- 競売によって自宅を失う
- 例外として職場に連絡される可能性がある
督促状や催告書が届くと不安になり連絡が怖くなりますが、放置すると上記のような事態が発生します。
返済が厳しいと感じた時点で金融機関へ相談すれば、リスケジュールに応じてもらえることもあります。
場合によっては返済負担が軽くなり、これまで通り自宅に住み続けられることが可能です。
最悪の事態を防ぐためにも、早めの行動を心がけましょう。
専門家に相談せず一人で抱え込む
住宅ローンの返済が難しくなったとき、自分一人で解決しようとするのはやめましょう。
住宅ローン問題を解決するには、いくつかの専門的な知識が必要だからです。
例えば、個人再生や任意売却といった制度は聞き馴染みがなく、専門家のサポートが欠かせません。
専門家に相談せず自力で解決しようとすると、有効な制度を知らないままブラックリストに載ってしまうリスクがあります。
夜逃げをする
住宅ローンの返済が行き詰まったからといって、夜逃げはしないでください。
夜逃げは一時的に気分が楽になるかもしれませんが、次のように状況が悪化するだけで何も解決しません。
- 競売の手続きは止まらない
- 残債はそのまま残る
- 連帯保証人に借金がのしかかる
物理的に距離を置いても、借金や競売の手続きはそのまま進み続けます。
また、住民票を移さずに生活を続けると、保険証が使えないなど、日常生活に支障が出る可能性があります。
夜逃げを考える前に、自己破産や任意売却といった法的な手段を選びましょう。
こうした冷静な判断が、状況を立て直すカギとなるでしょう。
まとめ|住宅ローンが払えなくてもすぐに家を失うわけではない
この記事では、住宅ローンが払えない場合に起こることを時系列に解説し、その対処法をまとめました。
失業や突然の収入減少により、住宅ローンの返済が厳しくなることは誰にでも起こりえます。
そのため、返済が厳しいと感じた時点で金融機関へ相談しましょう。
連絡が怖くて不安になるかもしれませんが、放置すれば事態は悪化するだけです。
競売を回避するためにも、早めの行動が重要です。